株式会社ロータス・サーマル・ソリューションのプレスリリース
~AIデータセンターの高発熱化に対応する熱設計・信頼性評価技術~

新技術の概要
生成AIやHPCの普及により、データセンターではCPU・GPUの高発熱化が進み、効率的な冷却技術が求められています。特に、サーバーを冷却液に直接浸す「液浸冷却」では、半導体と冷却部材の間に使用されるTIMの長期的な熱性能や信頼性が重要となります。今回、山陽小野田市立山口東京理科大学とロータス・サーマル・ソリューションの共同研究チームで、液浸環境下でTIMの接触熱抵抗を連続的・
定量的に測定する「その場(in-situ)評価技術」を確立しました。これにより、冷却液への曝露や温度・圧力などによってTIMの熱性能が時間とともにどのように変化するかをリアルタイムで把握できます。
本技術は、これまで把握が難しかった液浸環境下でのTIMの劣化や熱的信頼性を「実際の熱性能」で評価できる点が特徴です。今後は、日本液浸コンソーシアムを通じて評価方法の実証・標準化を進めるとともに、NEDOの支援のもと、TIMの劣化メカニズム解明、寿命予測技術の確立を目指します。さらに将来的には、TIMだけでなく、ヒートスプレッダや金属接合部、冷却部材など、半導体から冷媒までの熱輸送経路全体を対象とした信頼性評価への展開を目指しています。
ポイント
〇 沸騰・液浸冷却環境下において、CPU・GPUなどの半導体素子と冷却部材の間に介在する熱界面材
料(TIM)の接触熱抵抗を、連続的かつ定量的に評価する技術を確立しました。これにより、液浸環
境下での熱抵抗の経時変化をリアルタイムに把握することが可能となります。
〇 本技術により、冷却液への曝露や温度・圧力などの熱負荷によって生じるTIMの状態変化が、実際
の熱性能にどのような影響を与えるかを定量的に評価することが可能となります。これまで評価が困
難であった液浸環境下でのTIMの熱的信頼性を可視化し、液浸冷却システムの長期信頼性向上や熱設
計の高度化に貢献します。
〇 本評価技術は、一般社団法人日本液浸コンソーシアムを通じて実証・評価方法の標準化を進め、液浸
データセンターにおける熱設計・部材選定・長期信頼性評価の基盤技術として普及させていきます。
〇 本取り組みの革新性と社会実装可能性が評価され、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開
発機構(NEDO)の「官民若手研究者発掘支援事業(若サポ事業)マッチングサポートフェーズ」に
採択されました(研究代表者 山陽小野田市立山口東京理科大学 結城 光平)。今後、NEDOの支
援のもと、TIMの劣化メカニズムの解明や寿命予測技術の確立に向けて研究開発を進めます。
詳細の内容は以下
【背景】
生成AIやHPC(高性能計算)の普及に伴い、データセンターではCPU・GPUの高性能化・高発熱化が急速に進んでいます。サーバーの消費電力増加に伴って発生する熱を効率的に処理することは、データセンターの省エネルギー化と安定運用を実現する上で重要な課題となっています。こうした中、CPU・GPUなどの高発熱デバイスを冷却液に直接浸漬する液浸冷却技術は、高い冷却性能と省エネルギー性を両立する次世代の冷却技術として注目されています。
一方、液浸冷却システムでは、半導体素子とヒートスプレッダや冷却部材の間に使用される熱界面材料(TIM:Thermal Interface Material)が、長期間にわたり冷却液、温度変化、熱負荷などの影響を受けることになります。
TIMの状態が変化すると、半導体素子から冷却部材への熱移動を妨げる接触熱抵抗が変化し、結果として半導体素子の温度上昇や冷却性能の低下につながる可能性があります。しかし、液浸環境下でTIMを実際に使用しながら、その接触熱抵抗の経時変化を連続的に測定することは困難です。そのため、液浸環境下におけるTIMの熱性能が時間とともにどのように変化するのかを定量的に把握し、さらにその変化から長期信頼性や寿命を予測するための評価技術が求められていました。
【開発技術の内容】
このような背景のもと、山陽小野田市立山口東京理科大学工学部機械工学科の結城光平講師および株式会社ロータス・サーマル・ソリューションの井手拓哉(代表取締役社長)らの共同研究チームは、「液浸環境下における接触熱抵抗のin-situ(その場)評価技術」を開発し、液浸環境下でTIMの熱性能を連続的に評価する手法を確立しました。
本技術では、冷媒中に浸漬したTIMを介して接合した模擬熱源と模擬冷却器の間に熱流束を与え、接合部の温度差および熱流束を測定することで、TIMを含む界面の熱抵抗を連続的に算出します。これにより、TIMに対して冷媒への曝露、温度、圧力などの条件を与えながら、熱抵抗が時間とともにどのように変化するかをリアルタイムに把握することが可能となります。
従来は、試験前後の状態観察や重量変化などから推定することが多かったTIMの状態変化について、本技術では、「実際に熱をどれだけ通しにくくなったか」という熱性能そのものを連続的に評価できる点に特徴があります。
これにより、冷却液への曝露や熱・機械的負荷によって生じるTIMの膨潤、溶出、流動、界面状態の変化などが接触熱抵抗に及ぼす影響を定量的に把握することが可能となります。
さらに、得られた熱抵抗の経時変化を解析することで、将来的にはTIMの劣化メカニズムの解明や劣化速度の評価、寿命予測モデルの構築につなげることが期待されます。

【今後の展開】
本技術については、一般社団法人日本液浸コンソーシアムを通じて、実際の液浸冷却環境における実証を進めるとともに、評価条件や評価方法の標準化を目指します。
また、NEDO「官民若手研究者発掘支援事業(若サポ事業)マッチングサポートフェーズ」における支援のもと、今後は、TIMの劣化メカニズムの解明、劣化速度の定量化、寿命予測技術の確立に向けた研究開発を進めます。
将来的には、TIMだけでなく、ヒートスプレッダ、金属接合部、冷却部材など、半導体から冷媒までの熱輸送経路全体を対象とした熱信頼性評価技術へと発展させ、液浸冷却システムの設計・部材選定・長期運用を支える評価基盤の構築を目指します。

