デジタルで拓く、フレイル予防の新時代

健康寿命を延ばすフレイル予防の新たなアプローチ、「フレイル予防支援VR」

大塚製薬株式会社のプレスリリース

健康寿命を延ばすフレイル予防の新たなアプローチ、「フレイル予防支援VR」

大塚製薬株式会社(以下、「大塚製薬」)は、一人ひとりの可能性に向き合うトータルヘルスケアカンパニーとして、人々が身体的・精神的、そして社会的にも健康であるウェルビーイングの実現への貢献を目指し、様々な活動を展開しています。超高齢社会となった日本において、認知症や要介護者の増加が大きな社会課題となる中、「健康」と「要介護」の中間に位置する状態である「フレイル(虚弱)」を早期に予防することが、健康寿命の延伸や介護予防の観点からもますます重要視されています。

大塚製薬では、株式会社ジョリーグッドとの共同事業であるVR(バーチャルリアリティ)トレーニングプログラム「FACEDUO(フェイスデュオ)」の新コンテンツとして、2025年12月に「フレイル予防支援VR」の提供を開始しました。本取り組みに合わせ、同月にメディアセミナーを開催したほか、翌2026年2月には自治体職員や医療・介護関係者を対象としたウェビナーを実施しました。各セミナーには、コンテンツの監修者である東京大学 高齢社会総合研究機構 機構長/未来ビジョン研究センター教授の飯島勝矢先生をお招きし、フレイル予防に関する講演を行っていただきました。

フレイル予防の推進と地域包括ケアシステムの構築に精力的に取り組む飯島先生は、フレイルの兆しに早期に気づき、生活の中で予防行動へつなげるためには、従来のパンフレット型の啓発だけでは届きにくい部分があることを指摘します。日常の中では気づきにくい小さな変化を“体験”として理解し、自分ごと化へと導く手段として、VRの可能性について語りました。本ニュースレターでは、メディアセミナーおよびウェビナーで飯島先生が講演した「デジタルで拓く、フレイル予防の新時代」の内容をご紹介します。

健康の先にある「幸福長寿」をどう支えるか

健康寿命を延ばすことが社会的な課題となる一方で、「ただ身体機能を維持するだけでは人は幸せに生きられない」と飯島先生は指摘します。重要なのは、健康のその先に何を楽しみ、どのように生きがいを見いだすかという視点であり、そこにこそフレイル予防の核があると語ります。

講演する飯島勝矢先生

フレイルとは、加齢に伴う様々な変化が重なり、体力や気力が弱まった“要介護の手前の状態”を指します。筋力低下などによる「身体的フレイル」に加え、気持ちの落ち込みや認知機能の低下といった「精神・心理的フレイル」、さらには人とのつながりの希薄化や経済的困窮による「社会的フレイル」の3つが複雑に絡み合い、連鎖的に悪化していくことが特徴です。しかし同時に、フレイルは“可逆的(回復できる)”な状態でもあります。飯島先生は、予防や改善の余地があるからこそ、できるだけ早い段階で気づくことが重要であり、日常生活の中の“なんとなくうまくいかなくなった”という変化に意識を向けることを呼びかけました。

BMIや見た目では、実際の “筋肉量”は分からない

講演では、フレイル予防において重要となる「サルコペニア(筋肉減弱症)」について紹介されました。サルコペニアは加齢により筋肉量や筋力が低下する状態で、筋肉細胞は次第に萎縮し、一部は脂肪に置き換わっていきます。しかし、健康診断では筋肉量を測らないため、多くの人が気づけないことが課題となっています。

日本では長年「メタボ予防」が重視され、BMI25以上は“肥満”とされてきました。しかし、中年層を想定してつくられたメタボ予防の基準を高齢者にそのまま当てはめると、誤った評価につながってしまう場合があります。講演ではその具体例として、BMIが異なる高齢者の比較事例(下図参照)が紹介されました。BMIの数値だけを見ると、Aさん(BMI26.0)は“やや肥満”、Bさん(BMI22.3)は“標準体型”と判断されます。ところが実際に身体の筋肉量を調べてみると、Aさんは筋肉がしっかりついた“筋肉隆々”の状態である一方、標準体型に見えるBさんは筋肉が少なく「隠れサルコペニア」に陥っており、むしろ要介護へ進むリスクが高い状態にありました。この例が示すように、見た目やBMIだけでは、筋肉量や身体機能を正しく評価することはできません。高齢者の健康を考えるうえでは、体重ではなく“筋肉の状態”にこそ目を向ける必要があるのです。

筋肉量の測定により、BMI26.0のAさんは筋肉量が十分でありBMI22.3のBさんは理想的な体型に見えるが“隠れサルコペニア”に陥っていることが判明

飯島先生は「75歳からはメタボ予防からフレイル予防へのギアチェンジが必要」と述べ、従来の“痩せなさい”という指導が高齢期には逆効果となる可能性を指摘しました。筋肉は歩行や立ち上がりといった日常動作を支えるだけでなく、代謝や免疫にも関わる重要な組織です。高齢者では「痩せる」ことよりも「しっかり栄養を摂って筋肉を守る」ことが重要であり、そのためには筋肉の状態を正しく理解し、食事と日々の活動を通じて筋肉を維持していくことが欠かせません。

フレイル予防において、運動とともに大事な 「人とのつながり」

また、「フレイル予防」というと運動が注目されがちですが、飯島先生は「運動だけに偏った指導では、十分な効果が得られない場合がある」と指摘します。講演では、運動習慣がなくとも、文化活動や地域活動などの非運動性の活動に参加している人のほうが、運動だけを習慣にしている人よりもフレイルリスクが低いという研究結果が示されました。仲間と関わり、目的を共有しながら過ごす時間は、心の張り合いや生活のリズムを育み、結果的に身体を動かすことにもつながります。

文化活動やボランティア・地域活動といった人とつながる活動は、非運動性であるが、フレイルリスクを下げることが示されている

VR活用の可能性 ― 予防意識、そして場づくり

フレイル予防には、早い段階で自身に気づいてもらうことが重要となり、デジタルはそのきっかけづくりとして期待されます。メディアセミナーでは、飯島先生監修によるVRトレーニングプログラム「FACEDUO」の新たなコンテンツ「フレイル予防支援VR」の体験会も実施されました。当コンテンツは、VRでフレイルの兆しを疑似体験することで、利用者が早期の気づきを得られるよう支援し、予防行動への意識を高めることを目的としています。パンフレットや動画では伝えきれない、日常に潜む小さな違和感、—たとえば「ペットボトルの蓋が開けにくい」、「食事中に少しむせる」、「横断歩道を渡りきれなそうになって、不安を感じる」といった状況を、本人の視点でリアルに体験できるよう設計されています。

飯島先生は、「栄養」「身体活動」「社会参加」の3つを、フレイル予防のための“三本柱”として挙げています。この視点を取り入れた「フレイル予防支援VR」は、自治体が開催する健康イベントや、地域包括支援センター、介護施設などで行われるフレイル予防教室など、地域住民が集まる場での活用を想定して開発されました。専門知識がなくても、参加者が体験を通じて、自ら気づきを得られるのが大きな特長です。

VRが、地域における健康長寿の取り組みのレベルアップに貢献

飯島先生は、「高齢者による高齢者支援」そして「地域住民だけで実施できるフレイルチェックのモデル」の実現に向けて、「フレイルサポーター」という制度を立ち上げています。フレイルサポーターは、地域の高齢者が主体となり、同じ地域に暮らす仲間のフレイルチェックを実施する取り組みです。チェック項目には、生活機能や栄養(食・口腔)、社会参加などの多面的な内容が含まれており、簡易的な筋力評価も実施します。これにより、身体的・社会的・栄養的な変化を早期に把握し、予防行動へつなげることを目指しています。高齢者が自らの役割を通じて生きがいや、やりがいを見いだしながら、社会参画の機会を広げていく取り組みであり、地域における新たな自助・互助のかたちとして広がりを見せています。

飯島先生は「フレイル予防支援VR」を体験したフレイルサポーターから寄せられた「体験すると、話だけでは分かってもらえないことがしっかり理解してもらえる」、「没入体験を通じて自分ごと化できる」といった声を紹介し、現場から非常に前向きな反応が得られていると述べました。住民同士が一緒にVRを体験することで、自然に笑いや会話が生まれ、活動を継続する意欲や、新たな仲間が加わるきっかけにもなることから「地域で続けてきた健康長寿の取り組みを一段レベルアップさせることができる」との見解を示しました。

フレイルの兆候をVRで疑似体験
VR機器(右)と映し出される映像(左)

デジタル技術を取り入れた新しいアプローチが“場づくり”となることで、これまで地域活動に参加していなかった人々も巻き込みながら、社会参加の輪がより大きく広がっていくことが期待されます。飯島先生は、「フレイル予防支援VR」はフレイル予防の大切さを伝えるだけではなく、地域での予防行動への参加を促し、住民同士の交流を広げることで、地域の取り組み全体を発展させるツールになり得ると述べました。

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東京大学 高齢社会総合研究機構 

機構長・未来ビジョン研究センター教授

飯島 勝矢(いいじま かつや)先生

1990年東京慈恵会医科大学卒業、千葉大学医学部附属病院循環器内科入局、東京大学大学院医学系研究科加齢医学講座 助手・同講師、米国スタンフォード大学医学部研究員を経て、

2016年より東京大学高齢社会総合研究機構教授、

2020年より同研究機構教授・機構長、および未来ビジョン研究センター教授

◆参考: 大塚製薬株式会社 2025年12月2日プレスリリース

FACEDUO「フレイル予防支援VR」提供開始

~フレイルへの早期発見を促し、健康維持と介護予防を支援~

https://www.otsuka.co.jp/company/newsreleases/2025/20251202_1.html

◆FACEDUO 「フレイル予防支援VR」 についてはこちらをご覧ください。

https://www.faceduo.jp/frailty/

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